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パスツール・ジャパン サイエンティフィック・ワークショップ

 パスツール・ジャパン サイエンティフィック・ワークショップ

2024年6月24日に東京の在日フランス大使館アトリウムにて、パスツール・ジャパン サイエンティフィック・ワークショップが開催されました。このワークショップの目的は、日本の科学者たちと日本パスツール研究所の科学的方向性と戦略について議論することでした。本イベントは、免疫学、ワクチンデザイン、新興感染症の第一線で活躍する専門家や様々な大学や研究所との共同研究からなる包括的なプログラムで行われました。

1.開会の挨拶と基調講演

ワークショップは、在日フランス大使館職員のアデリーヌ・ラッソー氏による開会の挨拶とパスツール研究所所長のヤスミン・ベルカイド教授による基調講演から始まりました。パスツール研究所のジェームス・ディ・サント教授が座長を務め、ウェルカムスピーチでは、科学研究の発展における国際的なコラボレーションの重要性を強調しました。

2.免疫老化

最初のセッションは、京都大学医科学研究科附属ゲノム医学研究センター長の松田文彦教授が座長を務め、免疫老化(immuno-senescence)をテーマとして、免疫システムの加齢老化について議論されました。濵﨑洋子教授(京都大学)はヒトT細胞の老化とiPS細胞を用いた胸腺機能の再生について、椛島健治教授(京都大学)はシングルセルRNA-seq解析法を用いた皮膚の老化について発表しました。

3. 免疫学とワクチン/薬剤設計

パスツール国際ユニット(PIU)として共同研究をおこなっているジェームス・ディ・サント教授(パスツール研究所)と石井健教授(東京大学医科学研究所)が座長を務めた2つ目のセッションでは、免疫学とワクチン・医薬品開発の最新の研究について議論されました。ジェームス・ディ・サント教授はAMED-SCARDA UTOPIAプロジェクトを紹介し、チョバン・ジェヴァイア教授(東京大学)は生物学的障壁における宿主と病原体の相互作用について考察し、カヴィアン・ニルファー准教授(東京大学)は成人と小児におけるSARS-CoV-2抗体の状況を分析しました。セッションの最後には、反町典子客員教授(東京大学)が将来のパンデミックに向けた研究基盤の構築とアカデミックな創薬の促進について議論し、石井健教授はナノ粒子としてのワクチンとアジュバントの科学とデザインについて掘り下げました。

* パスツール国際ユニット(PIU)とは: https://pasteur.jp/en/piu/

4. 新興感染症

パスツール国際新興感染症研究センター(PICREID)のアナワシ・サクンタバイ教授は、新興感染症への備えをテーマとした3つ目のセッションの座長を務めました。佐藤佳教授(東京大学)はGP2-Japanコンソーシアムと将来のパンデミックに備える取り組みについて、松野啓太教授(北海道大学)はダニ媒介性ウイルスの新興感染症に関するフィールド調査から得られた知見について、渡辺知保教授(長崎大学)はヘルスリサーチの枠組みとしてのプラネタリーヘルスについて発表しました。

5. パスツールネットワークとのコラボレーション

パスツール・ネットワークにおける共同研究に焦点を当てた4つ目のセッションでは、韓国パスツール研究所のディミトリ・ラヴィレット科学部長が座長を務めました。佐藤尚子先生(理化学研究所)は理化学研究所とパスツール研究所との共同研究で取り組んでいるニューカレドニアにおける肥満と2型糖尿病について、立川(川名)愛先生(国立感染症研究所)はカンボジア・パスツール研究所と共同研究を行っているデング熱ワクチン開発のためのT細胞免疫学について、狩野繁之先生(国立国際医療研究センター)はラオス・パスツール研究所と共同研究を行なっている東南アジアにおける寄生虫性疾患のプログラムについて、俣野哲朗先生(国立感染症研究所)は感染症の世界的な制圧に向けた国立感染症研究所の取り組みについて紹介しました。

6. 京都大学におけるPIU

最後のセッションでは、京都大学の松田文彦教授が座長を務め、京都大学におけるPIU(パスツール国際ユニット)からの知見が紹介されました。矢野誠教授はCOVID-19に対する社会的行動と感受性について、上野秀樹教授はCOVID-19の懸念される変異株に対するT細胞およびB細胞の応答について、ジャンタシュ・アレヴ教授は試験管内でのヒト胚体軸発生の再構成について、斎藤通紀教授はヒト生殖細胞の発生メカニズムについて発表しました。

7. 座談会とまとめ

ワークショップの最後にはパスツール研究所の元所長フィリップ・クリルスキー教授による総括スピーチが行われ、ワークショップを通して発表された目覚ましい進歩や革新的な研究が強調されました。最後に参加者全員と主催者に感謝の意を表し、本ワークショップは閉会しました。